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2022.8.15[チーム]

[ WE ARE GAMBA OSAKA ]FW32 坂本 一彩

プロとしてサッカーに向き合う中で、
選手を熱くさせるものは何なのか。
何に彼らの気持ちは震えるのか。
次に向かわせる原動力となるのか。
選手それぞれが抱く『熱』の正体を探る。



「自分のところでボールを収めて、さあ、攻めるぞという瞬間にスタジアムが湧くのを感じるというか。ファン・サポーターの皆さんのボルテージが『ここから、いくぞ』という感じでひとつ上がるのがわかる。それに押されて自分がゴールに向かって走るスピードがグッと上がるのを感じます」
 特に最近は、そうした感覚を味わうことが増えたという。きっかけはJ1リーグ第15節・サンフレッチェ広島戦でのプロ初ゴールだ。
「広島戦でJ1リーグでは2ヶ月ぶりくらいに先発のチャンスをもらったんですが、そもそも試合前からデビューしたての頃より落ち着いている気はしたんです。『ここで結果を残せたら、このあと試合に絡める回数も増えるんじゃないか』と思っていたし、だからこそ自分にとって今シーズンのキーになる、一番大事な試合だという思いもあったので、いつにも増して力は入っていたんですけど(笑)。ただ、自分のゴール以上に、出た試合でチームが勝つこともすごく大事だと思っていたので、とにかくチームのために自分ができる仕事を精一杯やろうと思って試合に入りました。その中で圭介くん(黒川)が先制点を決めてくれたことで、チームとしても自分としてもいろんな力みが取れて、それが自分の決めた2点目につながったんだと思う。あのゴールを決められたことでめちゃめちゃ嬉しいって気持ちと、ホッとした気持ちと、ようやくスタートできたって思いと…いろんな感情の中でスッと気持ちが楽になったというか。そんなにいろんなものを背負っていたつもりは全くなかったけど、あの試合を機に自分が思うプレーをできるようになったし、自然といろんなことを感じられるようになりました」
 スタジアムの雰囲気、同じピッチに立つ仲間の声、視界に飛び込んでくる相手選手の動き。ピッチ上で起きるさまざまなこと――。「そうは言っても今でも必死です」と笑うが、それでも得点が生まれた事実はいい意味で気持ちにも、プレーにも余裕をもたらし、更なる責任を生んでいる。
「ユース時代、クラブ宛に『スタジアムにはサッカーを楽しむだけではなく元気をもらいに行っています』という内容の手紙がサポーターの方から届いたと聞いて、プロサッカー選手として戦うということは、応援してくれる人たちに元気を届ける役割も担っているんだと学びました。その言葉の意味が実際にこうしてたくさんの人に応援してもらってプレーする中で少しずつ実感できるようになってきたし、自分も『ゴール』で元気を届けられる選手になりたいと思っています。ガンバのFW陣には、例えば“パトリック=空中戦に強い”、というように、明確な特徴を持った選手が揃っているのに対し、僕はこれといった特徴がない選手だと思うんです。でも、その分、攻撃の起点になったり、組み立てに参加したり、前線で走り回ったり、背後に仕掛けたり、いろんなことを幅広くできる。それを自分の武器にしながら、ピッチのあちこちに顔を出して、受けて、動いて、を繰り返して得点を積み重ねていける選手になりたいと思っています」
 もちろん、得点の先に描くのは、ガンバの勝利に他ならない。坂本の言葉を借りれば「残留するためではなく、順位を上げるため」のそれを、残り10試合、ひたすら追い求める。



Interview and text by Misa Takamura

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