- シーズンの前半は周りに気圧されて合わせることばかりに終始していた
- 『変わらないといけないのは自分』だとわかっているのに、なかなか殻を破れなかった
- 『組む人に合わせてスタイルを変えられる』という新たな強みが備わった
- 自分の色を出して自信を持ってプレーすることが、責任を果たすことにも繋がる
関西学院大学時代から持ち続けてきたマインドが、プロ1年目の今シーズンを戦う上でも力になった。
「壁にぶつかった時に、人のせいにしない」
前半戦は思うように試合に絡むことができず、時にガンバU-23でJ3リーグを戦ったこともあったが、その都度『自分』が変わることに気持ちを注いだ。
「スター選手がごろごろいるガンバで、単純に最初は周りに飲まれてしまっていました。足元の技術が当たり前のように高い環境に身を置いて、少しビビっていたんだと思います。例えば、ガンバのパス回しの中に入ると、そのテンポで自分も合わせて回さなきゃいけない気になるというか。本来の僕なら、そこで1つリズムを変える縦パスを入れたり、前に運ぶといった変化をつけるのが持ち味なのに、周りに気圧されて合わせることばかりに終始してしまっていた。そんな風に持ち味じゃないところで勝負しても当然いいプレーはできないし、ツネさん(宮本恒靖監督)の目に止まるはずもない。そのことに気がついて『変わらないといけないのは自分』だとわかっているのに、なかなか殻を破れなかったのが序盤戦の僕でした」
転機になったのはJ1リーグ14節・ベガルタ仙台戦だ。3戦勝ちなしの状況下、初めてスタメンに抜てきされた山本は「自分を出すこと」を頭に置いてピッチに立った。それまで、森下仁志U-23監督や山口智ヘッドコーチから練習で繰り返し言われてきた「苦しい時に自分を救ってくれた言葉」を忘れずに、だ。
「ビビるな」
「前を向いて勝負しろ」
「お前なら、もっとやれる」
試合は開始早々、相手に先制点を許す展開になったが、8分に自ら決めた同点ゴールで気持ちが落ち着いた。
「僕はこれまでも点を取ることでリズムを見出してきただけに、点を取れて落ち着けたし、その後も周りの選手に助けられて初先発の試合を勝利することができた。と言っても、仙台戦は守備の時間も長く、僕自身は何かをやれたという手応えもありませんでした。だからこそゴールを決めたのも、チームが勝ったのも『持ってるな』というのが正直な感想です。ただ、守備の時間が長くなり、周りを見て自分のポジショニングを変えることを求められたことで『ああ、こういうプレーも効果的なんだ』と気づけたのは収穫でした」
そして何より、続く柏レイソル戦や湘南ベルマーレ戦で黒星を喫したにも関わらず、先発を外されることなく継続してチャンスをもらえたことも責任に変わった。
「柏レイソル戦も内容は悪かったけど個人的には『守備のところでこういうプレーができる』という手応えがあったし、湘南戦は少しボールを持つ時間が増えた中で『何かを掴みかけている感覚』があった。だからこそ、それを確かなものにしていく上で続けて起用してもらえたのは大きかったです。特に陽介くん(井手口)とダブルボランチを組むようになり、陽介くんが出て行った後のスペースを埋めることを心がけているうちに、自分のウリにしていた『視野の広さ』が、これまでの攻撃だけではなく守備でも生きると感じられたのは自信になった。その気づきによって自分に『組む人に合わせてスタイルを変えられる』という新たな強みが備わった気がしています」
コンスタントに試合に絡んでいる今も心がけているのは、自分の『色』だ。ガンバのボランチといえば遠藤保仁と言われる時代が長く続いた中で、その後釜を預かることへのプレッシャーはある。ただ、その凄さを肌身で感じたからこそ、自分らしく戦うことを心がけている。
「ヤットさんのことはすごく尊敬しているし、盗みたいプレーもたくさんあります。でも学ぶことはできてもヤットさんになれるわけじゃないし、1年足らずのキャリアの僕がヤットさんに追いつけるはずもない。だからこそ、僕は僕の色で勝負しようと思う。ガンバのボランチはある意味、ガンバを象徴するポジションで責任は否が応でも感じるけど、自分の色を出して自信を持ってプレーすることが、責任を果たすことにも繋がるはず。だからこそ何にも左右されない『自分』のプレーで勝負したいと思っています」
今シーズンは新型コロナウイルスの影響でサポーターを近くに感じられない時間が続いているが、そうした中でも山本は改めてプロサッカー選手としての幸せを感じた取った瞬間があったと話す。
「入場の際、真っ暗のスタジアムにライトが灯される瞬間がすごく好きで…ライトが点灯した時にたくさんの人の目が自分に注がれているのを感じて、こういう瞬間を味わうためにサッカーをしているんだなと実感しました」
そんな風にたくさんの人に応援してもらう幸せもピッチに立つ責任に変わっている。
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Interview and text by Misa Takamura
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