「自分たちを奮い立たせるには十分すぎるほどの材料。何としても決勝で借りを返す」と準決勝後に言い切った宇佐美の言葉はガンバに関わる全ての人が共有する思いである。
アウェイのリーグ戦では川崎との直接対決で敗れ、目の前でライバルの歓喜を見せつけられたガンバ。しかし、「天皇杯でリベンジ」を合言葉にリーグ戦で2位を死守し、天皇杯の準決勝では難敵、徳島に快勝。5年ぶりとなる元日決戦の切符を総力戦で掴み取った。
「チーム全員が関わってここまで来られた大舞台」と三浦が話す天皇杯の決勝は、ガンバが5年間遠ざかってきたタイトルを手にする最後のハードルである。
異例の過密日程の中で、サポーターやスポンサーなど様々な方に支えられながら戦っていることを改めて噛み締めたガンバだが、今回の天皇杯のタイトルはユニフォームの胸に10個目の星を刻みつけるだけでなく、強いガンバが帰ってきたことを見せつける格好の場でもある。
「ガンバは今、変化の時期で選手も入れ替わっている。ここでタイトルを取ることでさらに大きなクラブになれる」(倉田)。
常勝の記憶とプライドを持つ背番号10が口にするように、宮本ガンバが更に飛躍する上で欠かせない初タイトルだが、攻守両面で積み上げてきた今季のスタイルで川崎に真っ向からぶつかるのみである。
リーグ戦では今季いずれも完封負けを喫している上に、11月には0-5で敗戦。しかし、リスク覚悟で攻めざるを得なかったアウェイの戦いと異なるのが一発勝負の今回の顔合わせだ。
宮本監督も言う。「2回負けている反省も活かしながら試合に入りたいが、前の試合とは性格が違うところもある」
クラブ史上初の天皇杯制覇に加えて今季で引退する中村のラストマッチを飾るべく燃えてくるであろう川崎ではあるが、この試合に賭ける思いはガンバもそれ以上のモノを持っている。
家長や三苫、レアンドロ・ダミアンら警戒すべき選手は数多いが、宇佐美と小野瀬が戦線復帰したガンバも個の質と要所にいるキーマンたちの経験値ではまったく引けを取っていない。
「守備をする時間は長くなる。そこでどれだけ粘れるか」(三浦)。
粘り強い守備をベースにしながらも、リーグ戦終盤や準決勝で見せた鋭く、速いショートカウンターで川崎のゴールをこじ開けるのみだ。
延長戦だろうとPK戦だろうと求められるのは勝利のみ。「今年、色々なことがあったのでその思いも乗せてしっかりと勝って全員で喜びたい」と倉田は言い切った。
元日の国立競技場で、ガンバが復権を果たす時が来た。