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2023.3.6[チーム]

[ WE ARE GAMBA OSAKA ]MF29 山本 悠樹

今シーズンのWE ARE GAMBAOSAKAのテーマは『言葉』。
キャリアにおいて、サッカー人生を大きく動かした言葉や、
自分を突き動かすパワーワード、
今の自分につながる忘れられない体験に触れ、
独自のサッカー観を紐解く。

 試合中は感情の揺れも小さく、飄々とした姿が印象的な山本悠樹だが、意外にも「メンタルは弱い方」だと自己分析する。
「当然ながら自分のところでミスが出れば気持ちは焦ります。ましてやそれが失点に直結するようなミスだったら自分の情けなさとチームに迷惑をかけてしまった申し訳なさとでネガティブにもなります。また直接的にミスに関与しなくても、例えば昨年のようにチームとしての結果が出ていない時は『ボールを触りたくないな』と思っていたし、展開によっては『今の展開で、ここでボールを受けるのは嫌やな』と思いながらプレーしていました。感情を表に出すのが苦手なタイプなので、そんなふうには見えていないかもしれないけど(笑)」
 もちろん、それはプロサッカー選手としての1プレーの責任、1勝の重みを自覚すればこそ。もともとの性格的にも「いつもどこかで冷静に物事を見ているタイプ」ということもあって、時に想像する必要のない先のことまで考え過ぎて、自分を追い込んでしまうこともあるそうだ。
 ただ、一方で、その脳内には、常にポジティブな自分も共存する。
「ミスはプレーで取り返せ」
「ここでチャレンジしないのは自分じゃないやろ」
「ミスは誰にでも起きる。ビビるな、やり切れ」
 ともすれば臆病なプレーに走りがちな自分を奮い立たせるように、ポジティブな思考が次から次へと湧き上がる。そして、いつだって、最後はそのポジティブな思考が、足を前に踏み出す勇気をくれる。
「試合中にネガティブな感情になる自分が嫌で大学時代のチームメイトに勧められた『嫌われる勇気』って本を読んで自分を変えてみようと試みたことがあるんです。そこには『未来を想像せずに、今この瞬間を必死に生きましょう!』とか『他者の評価に振り回されず自分を貫きましょう!』的なことが書かれてあって…それにならって自分を変えようとしてみました。でも全然、無理でした(笑)。どれだけ頭の中からネガティブな感情を排除して『今』だけに集中しようとしても、先の結果も、他者の評価もやっぱり気になってしまうし、ミスも頭のどこかでは引きずってしまう。でもある時、そのことをふと、友達に漏らしたら『それも人間らしくていいやん』と言われて、そうかと。ミスに落ち込むのも、人の評価が気になるのも、時にプレーすることが怖くなるのも人間の当たり前の感情で、でも、結果的にそれに飲まれずにプレーできているのならそれでいいかと考えるようになり、ありのままの自分と付き合っていくことにしました。だから今もピッチに立っている時は頭の中では常に、ポジティブな自分とネガティブな自分が戦っています。もちろん、ずっとポジティブにいられるのなら、それが一番いいけど」
 ミスには動揺も、反省もし、時にネガティブな感情とも向き合いながら、だけどそんな自分に飲まれてしまうことなく、必ず乗り越えてみせると気持ちを奮い立たせて前を向く。もっとサッカーが巧くなるために。より自分らしくプレーするために。
「さぁ、ここからお前は何ができる?」
 逆境に立たされた時に決まって自分に投げ掛けているというこの言葉は、山本の進化を支えるパワーワードでもある。



Interview and text by Misa Takamura