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2024.5.13[チーム]

[ WE ARE GAMBA OSAKA ]DF33 中野 伸哉

プライド。直訳すれば、誇り、自尊心。
プロサッカー選手の誰もが胸に宿すものとはいえ、
選手ごとにその抱き方も、考え方も大きく違う。
今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAは、
選手の心の奥底で沸々と煮えたぎる、
それぞれの、プライドを解き明かす。

 自分の中に「確かにある」というプライドは、中野伸哉にとって「ピッチで自分らしく戦うための自信」とイコールだという。

「サガン鳥栖のアカデミーに所属していた時から二種登録選手としてJ1リーグの試合に出してもらっていたんですけど、一昨年、少しずつ試合に絡めなくなった頃から自分のプレーに迷いが生まれてしまったというか。監督が変わって、チーム戦術を自分の中でなかなか消化できなかったこともあり、このプレーでいいのか、この選択で合っているのかと迷いながらプレーするようになって、どんどん自分らしさが表現できなくなってしまった時期があったんです。その経験を通して、チーム戦術や役割以前のところでまずは自分が自信を持ってピッチに立たないと躍動できないと痛感したし、だからこそ常に自信を持ってプレーできる自分でいようと考えるようになりました」

 昨年夏、ガンバへの移籍に際しても、自信だけはなくさないでおこうと心に誓って新天地に向かったという。どのチームにも競争はあって、常に試合に出続けられるとは限らないが、その事実が自分の全てを否定するものではないと思えるようになったからだ。

「ガンバには巧い選手もたくさんいますけど、自分には自分の持ち味がある。人の真似ではなく自分の良さで勝負するから躍動感を持ってプレーできるはずですしね。だからこそ、どんな状況に置かれても常に自分という芯をブラさずにプレーを続けようと思っています」

 と言っても、近年はその芯を貫きながらも、チームの中で自分が活きることを考えるなら、周りを活かすプレーも必要だという思考も持ち合わせるようになった。自分のプレーの幅やピッチに立つ可能性を広げるためにも、だ。

「僕自身は外に張って縦に仕掛けるのが得意ではあるんですけど、今のガンバのサッカーの中で、あるいは周りとの組み合わせの中で、それが出せる時ばかりではないですから。例えば、左サイドMFにウェルトンがいる時は、彼のドリブルでの仕掛けという特徴を活かすためにも、左サイドバックは高いポジションを取らずに内側に矢印を向けてプレーをする方がいいし、対戦相手によっては相手のサイドMFを引き出すために敢えて低いポジションをとる時もある。ただ、そんなふうに、持ち味で勝負できないことに最近は悩まなくなりました。現代サッカーでは、サイドバックにいろんな役割を求められるようになったと考えても、周りを活かすことでプレーの幅を広げられればいいし、その上で自分の良さを発揮すればいいな、と。そうやって臨機応変にプレーを変化させられるようになれば自分の可能性ももっと広がっていくんじゃないかと思っています」

 今シーズンは展開に応じて左サイドMFを預かることもある中野だが、そこでも思い切りのいいプレーが目立つのはその思考があってこそ。72分からピッチに立ち、左サイドMFとしてプレーしたJ1リーグ第9節・浦和レッズ戦も、持ち味である守備力を光らせてボールを奪い、決勝点の起点にもなった。真っ直ぐにプライドが表現されたシーンだった。



高村美砂●文 text by Takamura Misa

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