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2025.6.16[チーム]
[ WE ARE GAMBA OSAKA 2025 ]FW23 デニス ヒュメット
昨年の戦いを通して、チームのキーワードになった『熱量』。
それらを漲らせた戦いの数々は、勝ちへの執着として表現され、スタジアムの熱狂を生んだ。
今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAは、その『熱量』の裏で、選手それぞれが宿すスピリットにスポットをあてる。彼らの魂は、熱意、勇気、決意は、どんな力を今シーズンのチームに与えてくれるのだろうか。
愛してやまないサッカーのため、笑顔でいることを忘れない。それがデニス ヒュメットが大切にしているスピリットだ。
「サッカーは、いつも喜怒哀楽に溢れています。いい時ばかりを過ごせる訳ではなく、苦しい時間に直面することもあります。移籍に伴ってチームメイトやスタッフとの別れもあれば、新しい出会いもあります。どれだけ勝利を望んでも、常に思い通りの結末を迎えられるとは限りません。ですが、それを含めて『サッカー』だからこそ、僕は常に共に戦う仲間を敬い、自分の大好きなサッカーに笑顔で向き合いたいと思っています」
そんな自分でいることが、ヒュメットのキャリアを前へと突き動かしてきた。彼の言葉にもある通り、いい時ばかりでは決してなかった。母国・スウェーデンでも最も『タレント性のある選手』と高い評価を得ながら、18歳で経験した初めての海外移籍でどん底に突き落とされたこともあったという。
「地元であるマルメFFで、アカデミー時代を含めて13年間在籍した中で、それなりの評価をいただいてフランスのトロワACに移籍したのですが、友達もいない、言葉の壁もある、それまでとは全く違うサッカーをする国に身を置いて、大きな不安に襲われ、ホームシックにもなりました。それまで築いてきたものを全て失って、0になったと言っても過言ではありません。結果、僕はフランスで何も掴むことができず、母国に戻りました」
だが、そうした状況に置かれても「なぜ、自分はサッカー選手になったのか」を考え続けたことが、再びヒュメットを立ち上がらせた。
「キャリアを歩んでいると下り坂も、上り坂もあります。仮に自分が前者に立っていると感じた時には、必ず基礎に立ち返り、謙虚にサッカーと向き合い、僕をいつも助けてくれた家族や兄妹への感謝をリマインドしてきました。その継続によって『前に進むスピードや目標達成までの時間は人によって違っていい』と思えたことが、今も僕をプロサッカー選手としてピッチに立たせてくれていると思っています」
サッカーへの揺るぎない愛にも支えられて。
「僕にとってのサッカーは、人生そのものです。仮に僕の人生にサッカーがなかったら、きっと空っぽの自分になっていたことでしょう。ただし、それは自分のためだけのものではありません。僕は常に家族を代表してサッカーをしていますし、僕のサッカーは父のため、母のため、兄弟のためのものであり、自分のルーツであるスウェーデンやトルコのためのものだと思っています。そのすべてがなければ今の僕はいないから」
ガンバに加入してからもその考えは変わっていない。新たなチャレンジにも、常に家族の存在を心強く感じながら成功を目指してきた。来日から1ヶ月が過ぎ『ゴール』を見出せるようになったのも、その謙虚に学び続けた過程があってこそだろう。
「加入して1ヶ月は、公式戦からやや離れていたことで薄れていたゲーム勘を取り戻し、Jリーグの特性、ガンバでの役割を体に覚えさせる時間だったと思っています。もちろん、デビュー戦からハットトリックでも決められれば最高でしたが、そんな偉業を達成できる選手はほぼいません。そう考えても体やメンタルをしっかり整え、『自分』を表現するには必要な時間でしたし、それがあったからここ最近は、ありのままの姿をピッチで表現できるようになり、ゴールにもつながり始めたのだと思います」
その上で今は、自身のプレーを「ガンバと共にタイトルを取ること」に結実させるための道を歩き始めたヒュメット。もちろん、大きな笑顔を携えて。
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高村美砂●文 text by Takamura Misa
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