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2023.4.3[チーム]

[ WE ARE GAMBA OSAKA ]DF34 江川 湧清

今シーズンのWE ARE GAMBAOSAKAのテーマは『言葉』。
キャリアにおいて、サッカー人生を大きく動かした言葉や、
自分を突き動かすパワーワード、
今の自分につながる忘れられない体験に触れ、
独自のサッカー観を紐解く。

 『凡事徹底』。
 江川湧清が初めてその言葉を聞いたのは、JFAアカデミー熊本宇城に所属していた中学生のとき。子供ながらに「このまま地元にいたらプロサッカー選手にはなれない」という思いから両親と暮らす地元、長崎県南島原市を離れて同チームに所属していた彼に、恩師である宮川真一氏は投げ掛けた。
「目標はプロだ、プロだと言うけど、本当になりたいと思うなら、先のことばかりを見るな。凡事徹底だ。何でもないような当たり前のことに徹底して取り組まないと道は拓けないぞ」
 もっとも、その時はまだ言葉が持つ本当の意味を理解できていなかったそうだが、高校進学にあたり進路を決める際に、初めて重く響いたという。
「正直、JFAアカデミーに加入したばかりの頃はチームで一番巧いと自負していたので宮川さんに言われた言葉も『はい、はい、わかってますよ』的に流していたんです。ちょっと天狗になっていたんだと思います。そのせいか3年生になった時には周りとの差がなくなっていたというか。逆に僕より優れた選手が2~3人いて…真面目にコツコツと頑張ってきた選手の方が明らかに成長していた。それに進路もあまりうまくいかなくて。当時、九州で唯一プレミアリーグに所属していた第一希望の大分トリニータユースのセレクションにも、JFAアカデミーの先輩たちが行っているからと受けた清水エスパルスユースのセレクションにも落ちてしまった。結果的にV・ファーレン長崎ユースに拾ってもらえたけど、その時に初めて宮川さんに言われた通りに毎日もっと頑張っておけばよかったと反省しました」
 以来、長崎でも常にこの言葉を胸に据えてプレーしてきたという。
「今の時間を大事にして、細かいことを地道に積み上げていこう」
 高校1年生の夏にセンターバックに転向した時も「最終ラインの方が視野も広がって楽しい」という感覚にも後押しされ、プレーの1つ1つに愚直に向き合いながら成長を目指した。その過程では高校3年生時とプロ1年目に2年続けて右前十字靭帯を断裂するという苦境に立たされたが、心が折れることはなかった。
「流石に2回目は堪えましたが、その時こそまさに『凡事徹底』だと。最初の4ヶ月くらいは毎日同じメニューに向き合わなければいけなかったけど、これを地道にやっていたら絶対に強くなれると思って乗り切りました」
 そして、その過程があったから「ピッチに戻れたし、ガンバにもくることができた」と笑った。
「結局、何事も継続して頑張ったもの勝ちというか。ケガからの復帰がいい例で、やるべきことを怠らなければまたサッカーができるんだ、と。そのことをケガから学んで改めて凡事徹底を意識していたら、J2でもコンスタントに試合に出られるようになり、今年はガンバにくることができた。正直、今はまだ試合を楽しむというより、初めてのJ1リーグで『このタイミングで走ってもパスが出てくるのか』『このFWはこんなボールの置き方ができるんだ』という新鮮な驚きの中でプレーしているところもあり…判断をそこに伴わせていくのに必死です。でも、初めて1年を通してJ2リーグを戦った2021年のように自分が成長できている感覚はすごくある。それを求めてガンバにきたと考えても、この先もしっかりいろんなことを積み重ねて1選手としても大きくなっていきたいし、その力をガンバに還元できるようにしてきたいです」
 J1リーグ第3節・ヴィッセル神戸戦以降、先発出場を続ける中で、試合を重ねるごとに増している輝きは、その手応えの証でもある。



Interview and text by Misa Takamura

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