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2024.3.11[チーム]
[ WE ARE GAMBA OSAKA ]GK22 一森 純
プライド。直訳すれば、誇り、自尊心。
プロサッカー選手の誰もが胸に宿すものとはいえ、
選手ごとにその抱き方も、考え方も大きく違う。
今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAは、
選手の心の奥底で沸々と煮えたぎる、
それぞれの、プライドを解き明かす。
「考えたこともなかった」そうだ。
自分に『プライド』はあるのか、ないのか。大事にしてきたのか、そうでないのか。ただ、その言葉を目の前にして直感的に浮かんだのは2つの対極にある考えだった。
「セレッソ大阪アカデミーに加入した時に初めてその単語を聞いて、子供ながらに大事なものなんだろうなとは思った気がします。でも、以来、成長の過程で噛み砕いて考えたことはなかったし、今でもそれが自分にあるのかは分かりません。ただ、こうしてキャリアを積んで改めて思うのは、プライドってめちゃくちゃ大事なものであり、すごく危険なものだということ。ガンバのエンブレムを背負うことに対してプライドを持つことは自分の武器になると思いますが、一方で、自身の成長を求める上では邪魔になりかねない。だからこれまでもプライドを意識することがなかったのかも知れない。そこは自分の中で明確に分けて考えなければいけないと思っています」
前者、つまりそれが『武器』になるという考えは、ガンバへの復帰によって改めて芽生えたものだという。直近のJ1リーグ第2節・アルビレックス新潟戦。久しぶりにパナソニックスタジアム吹田のピッチに立った一森はスタンドの熱狂に身震いしつつ、前半は背中から受ける声援を心強く感じながら力に変え、後半は常に視界に捉えていた青黒に染まったスタンドを見ながら「応援されるのは当たり前じゃない」という思いをより強くしていた。
「パナスタ特有の圧力、雰囲気は、どのクラブにあるものではないし、ここでプレーできるチャンスは誰もが得られるものでもない。だからこそ、この環境でプレーできることに改めて感謝もしたし、ここに集う人たちに絶対に喜んでもらいたい、だから勝ちたい、って思いがすごく強くなった。そのことからも、僕にプライドがあるとするなら、それは敵に対してとか、自分を誇示するために振り翳すものではなく、自分自身やチームメイト、スタッフ、家族、ファン・サポーターといった仲間に対して抱くもの。僕にパワーを与えてくれる人たちのために全力を尽くすことがガンバのエンブレムを背負う責任でもあると思っています」
その思いがあるから、時に心を鬼にして強い言葉で仲間を叱咤することもある。実際、今シーズンは練習でも試合でも一森の声がよく響く。「いいぞ!」「ナイスプレー!」ばかりではない。「寄せろ!」「そんなんじゃ変わらないぞ!」「そんなに簡単にやられてしまっていいのか!」。仲良しこよしの集団では、厳しい戦いを勝ち抜けないと思っているからだ。
「本音を言えば、仲間に厳しい言葉は向けたくないです。楽しくワイワイ、サッカーをして勝てるなら、その方がいいに決まっています。サッカーって一人の力で結果を変えられるほど簡単なものではないだけに、僕が厳しい言葉で仲間を叱咤したところですぐにチームが変わるとも思っていません。でも、だからと言って伝えるのをやめようとは思わない。チームのために自分はどんなプレーをして、役割を担って、仲間にどのタイミングどういう声掛けをするべきか。個々が細部までいろんなことを考えて、1つ1つ行動に繋げていくことを継続する先にしか勝利も、強いガンバもないと思うから」
その覚悟がゴールマウスで漂わせる気迫に変わる。
―
高村美砂●文 text by Takamura Misa
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