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2022.5.2[チーム]

[ WE ARE GAMBA OSAKA ]GK22 一森 純

J1リーグ第6節 名古屋戦

HEAT UP!!!
プロとしてサッカーに向き合う中で、
選手を熱くさせるものは何なのか。
何に彼らの気持ちは震えるのか。
何が、次に向かわせる原動力となるのか。
選手それぞれが抱く『熱』の正体を探る。



 試合当日、スタジアムに移動するバスの中では、いつも気持ちをフラットに保つことを心がけているという。チームメイトと言葉を交わすこともほぼない。耳を傾ける音楽も、テンションが高まりすぎているなと感じたら静かな曲で気持ちを落ち着かせ、その逆の場合はアップテンポな曲で気持ちを上げる。時に海外のスーパーセーブ集を観て気持ちを整えることもあるそうだ。
 スタジアムに到着し、着替えを済ませてからもその状況はほぼ変わらない。フラットに、フラットに。ピッチに足を踏み入れるまで、敢えてスイッチは入れない。
「アップ前にサポーターの皆さんに挨拶しにいくじゃないですか? あの瞬間、自分の熱がグッと上がるのを感じます。というより、サポーターの皆さんに入れてもらっている感じかな。目の前にいるたくさんのファンを目に焼き付けながら『この人たちに喜んでもらえるように、楽しんでもらえるように。何があってもボールに食らいついて失点はしない。マジで、死ぬ気で戦うぞ』という思いが自然と湧き上がってきます」
 実は、試合中も、給水をしているわずかな時間に敢えてスタンドを見ることもあるという。
「この人たちを喜ばせるんやろ? お前が止めるんやろ? じゃあ頑張れ、と、自分をもう一度奮い立たせるために、敢えて試合中、スタンドにいるサポーターの姿を見て力をもらっています」
 一森にとってのサポーターの存在は「自分が戦う上でなくてはならないもの」。だから、試合中も彼らのいるゴール裏に視線を送る。
「僕はホンマに弱い人間なので、人からの影響をもらって、応援してくれる人たちの力に引っ張ってもらえないと戦えない。もちろん、時には掛けてもらう言葉の中に嬉しくない言葉が混じっていることもあるし、厳しいことを言われて嫌な気持ちになることもあります。でも、それって、自分が小学生だった頃、スタンドから応援しているチームに向かって『もっと頑張れよ~』って思ったのと同じだと思うんです。応援しているチームだから、勝ちたいと思っているから、時に厳しい言葉も出てしまう。その気持ちがわかるから…そういう声が聞こえてこないように自分が頑張ろう、と思っています」
 そんな彼にとって、試合後、サポーターと喜びを共有できるガンバクラップは「めちゃめちゃ嬉しい」特別な時間だ。もっともプロ9年目でのJ1デビュー戦を勝利で飾った第6節の名古屋グランパス戦は、長期離脱を乗り越えてのデビュー戦に、ホームでの今シーズン初勝利という特別な要素が重なったこともあってだろう。ガンバクラップ中も「どこか現実とは思えなかった」そうだ。ようやく喜びを噛み締めたのは家に帰ってから。どんな時も寄り添い、支えてくれた家族から投げかけられた、短いけれど、すべての思いが詰まった「ホンマによかった」という一言で初めて頬が緩んだ。



Interview and text by Misa Takamura

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