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2025.4.21[チーム]
[ WE ARE GAMBA OSAKA 2025 ]FW8 食野亮太郎
昨年の戦いを通して、チームのキーワードになった『熱量』。
それらを漲らせた戦いの数々は、勝ちへの執着として表現され、スタジアムの熱狂を生んだ。
今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAは、その『熱量』の裏で、選手それぞれが宿すスピリットにスポットをあてる。彼らの魂は、熱意、勇気、決意は、どんな力を今シーズンのチームに与えてくれるのだろうか。
練習試合で約半年ぶりの『実戦』を戦い終えたあと、取材ルームに現れた食野亮太郎は声を弾ませた。
「久しぶりすぎて、ぜんぜん走れんかったけど、やっぱりサッカーは試合が一番! めっちゃ楽しかった!」
戦列復帰を目前に控えた1月のキャンプ中に再受傷して約3ヶ月。常に『反骨心』と『考えること』という2つのスピリットを胸に、リハビリに取り組んできたという。
「この世界はうまくいくことばかりじゃない。試合に出られなかったり、思うように調子が上がらなかったり、ケガも含めてネガティブなことの方が多いと思う。そこにどう向き合って、悔しさをポジティブなパワーに変えて成長に繋げられるかは、これまでのキャリアでも、リハビリ中も、意識してきたところ。そのマインドセットができていたから2度目のケガからも立ち直るのは早かったし、はやる気持ちを抑えながら、今、自分がすべきことに集中できた。だからこそ、この先も悔しさを喜びに変えられる瞬間が必ずくると思っています」
実際、「強くなってピッチに戻ってやる!」という反骨心を持ち続けながらも、冷静に自分の体に向き合った日々は、自分を前に進める力に変わった。
「たとえば体のどこが疲れているのか、から始まって、どの部分のストレッチをした方がいいのか、より重点的に鍛えた方がいいのかを考えることは、リハビリではすごく大事なこと。また、仮に元気にプレーできる状態だったとしても、試合に出られないこともある中で、単に悔しい! に終わらず、自分に何が足りなくて、どうすれば試合に出られるのかに向き合うことは、現状を変える上でも不可欠やと思っています。とか言いつつ、20歳前後の頃は人のせいにしたり、矢印を自分に向けられずにイラついた感情をそのまま顔や態度に出していたこともあります。子供の頃から両親にはいつも『考えて行動しなさい』と言われてきて、私生活ではそう心して過ごしてきたけど、いざサッカーのことになると冷静になれなかったこともありました。でもそういう失敗を繰り返しながら年齢を重ね、結婚もして、子供も生まれた今は、それじゃあアカンと。その部分では少し大人になった気もします」
これは、キャリアを積み上げるほど「サッカーはメンタルのスポーツ」だと実感してきたからでもある。特に、昨シーズンは試合に絡めない時期を過ごしたり、ケガによる長期離脱を経験するなど、ガンバに復帰した22年夏以降で「もっとも苦しいシーズン」を過ごしたが、だからこそ、そのマインドセットは自身にとって大きな意味を持った。
「本音を言えば落ち込んだ時期もあったし、完全に自信を失って、思うようにプレーができなくなった時期もありました。でも、その現実から逃げずに、ちゃんと向き合って『今は自分が変わるチャンスや』と思えたから、また0から這い上がっていけばいいと切り替えられた。そのおかげで、リハビリにもポジティブに向き合えたし、戦列に戻った今も真っ直ぐにサッカーを楽しめているんやと思う。ただ、僕の中ではそれは『丸くなること』は違うと思っているので。もちろん、周りの選手のいいプレーは素直にすごいな、と受け止めて学ぶことは必要だと思いますけど、だからと言ってメラメラとした、尖った自分も失いたくはない。最近はそこの折り合いをうまくつけられるようになってきて、すごくいいメンタルでサッカーに向き合えているので、あとはプレーを伴わせるだけ。ここからが食野亮太郎の見せ所やと思っています」
どんな時も反骨心を力にキャリアを切り拓いてきた食野の逆襲が始まった。
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高村美砂●文 text by Takamura Misa
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